9月までの数字が出そろう10月。眺めて終わると、冬の賞与も納税も「出たとこ勝負」になりがちです。
この記事のポイント
上半期の数字は「過去の成績表」ではなく、今期の着地を描く材料です。10月のうちに着地を1枚にしておくと、賞与・納税・採用を年末の慌ただしさの前に、落ち着いて決められます。
上半期の数字が「眺めて終わり」になる理由
半年分の試算表を前にしても、話が前に進まないことがあります。数字が悪いからではなく、見方が決まっていないからです。
- 前年より増えた・減ったで話が終わる
- 「下期で挽回しよう」で締めくくられる
- その数字を見て何を決めるのかが、最初から決まっていない
試算表は、問いを持って開くと急に話し始めます。いちばん役に立つ問いは「このままいくと、今期はどこに着地するか」です。
半年の数字から「今期の着地」を描く3ステップ
① 上半期をそのまま2倍にしない
多くの会社では、上期と下期で売上も経費も同じにはなりません。年末の繁忙、冬の賞与、10月からの時給の見直しなど、下期にだけ起きることがあります。
② 下期に「もう決まっている支出」を書き出す
冬の賞与、昇給、設備の入れ替え、修繕、販促の予定。社長の頭の中にあるものを、金額つきで紙に出します。現場の予定は、社長より幹部の方が詳しいこともあります。
③ 着地から逆算して、冬に決めることを並べる
見込みの利益が出たら、そこから「賞与にいくら回せるか」「納税にいくら残すか」を考えます。順番を逆にしないことが大切です。
たとえば、3月決算・従業員15名の会社で比べてみます。
| 項目 | 上半期×2 | 予定を入れた着地 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2億円 | 2億400万円 |
| 粗利 | 8,000万円 | 8,150万円 |
| 人件費(賞与含む) | 4,800万円 | 5,300万円 |
| その他の経費 | 2,000万円 | 2,100万円 |
| 利益(税引前) | 1,200万円 | 750万円 |
※数値は架空の例です。
売上は少し伸びる見込みでも、冬の賞与が夏より多いことや、時給の見直し、年末の修繕を入れると、利益は「2倍の計算」より450万円少なくなりました。
この差を3月に知るのか、10月に知るのか。それだけで、打てる手の数が変わります。
着地が見えると、冬の3つの決断が変わる
- 冬の賞与:「去年と同じ」ではなく、今期の利益の見込みから原資を決められます。社員にも理由を説明しやすくなります。
- 納税の資金:3月決算の会社なら、法人税の中間申告・納付の期限は11月末です(前期の法人税額によっては不要)。着地が見えていれば、決算後の納税額の目安もつかめます。
- 来期の採用と価格:利益の余力が分かると、来春の採用や価格の見直しを、年明けの慌ただしさの前に検討できます。
会議で使うなら「着地の1枚」を
おすすめは、A4一枚の「着地メモ」です。凝った資料は要りません。
- 上半期の実績(試算表の数字をそのまま)
- 下期に決まっている収入・支出
- 今期の着地の見込み(幅をもたせてよい)
- この冬に決めること3つ
幹部会議でこの1枚を囲むと、「頑張ろう」で終わっていた会議が、「では賞与はこの範囲で」「修繕は来期に回すか」という判断の場に変わります。毎月の試算表が出たら、1行だけ直していけば十分です。
3分でできるセルフチェック
☐ ① 今期の利益がどこに着地しそうか、おおよその幅で言えますか
☐ ② 冬の賞与の額を、何を基準に決めようとしていますか(去年の額?今期の利益?)
☐ ③ 下期に「もう決まっている大きな支出」を3つ挙げられますか
答えに詰まったところが、会社の伸びしろです。
上半期の試算表は、今期の残り半年をどう過ごすかを決めるための地図です。10月のうちに着地を1枚に描いておくと、冬の決断がぐっと落ち着いたものになります。当事務所では、こうした問いを決算書と試算表で社長と一緒に考える「経営戦略会議」を行っています(初回お試しは無料です)。
参考:国税庁「法人税のあらましと申告の手引(申告の種類と内容・中間申告)」
※本記事は2026年10月時点の公表資料に基づいています。個別の状況により取扱いが異なりますので、具体的な判断はご相談ください。