経営

冬のボーナス、「去年と同じ額」で本当に大丈夫ですか

「冬のボーナス、去年と同じでいいかな……」
下げれば社員の顔が浮かび、上げれば資金が心配。結局、去年の額をなぞってしまう。

この記事のポイント

冬の賞与は「去年の額」からではなく、「今期の利益の見込み」から逆算して決めます。会社負担の社会保険料まで含めた「総額の枠」を先に決めると、迷いがぐっと減ります。

「去年と同じ」が、実は一番むずかしい理由

賞与の額を決めるとき、多くの社長がまず見るのは去年の支給額です。わかりやすく、社員にも説明しやすいからです。

ただ、去年と今年では会社の状況が違います。最低賃金の引上げで毎月の人件費の土台が上がっていたり、仕入れ値や光熱費が変わっていたりします。同じ額でも、会社にとっての重さは毎年変わるのです。

もう一つ見落としやすいのが、賞与にも社会保険料がかかることです。

  • 賞与の額(1,000円未満切り捨て)に保険料率をかけ、会社と社員で半分ずつ負担します。
  • 兵庫県の協会けんぽに加入している会社で40歳未満の社員なら、会社負担は健康保険と厚生年金だけで約14.2%です(令和8年度の料率)。
  • 40〜64歳の社員は介護保険料が加わり、令和8年4月分からは子ども・子育て支援金も上乗せされています。

つまり30万円の賞与を出すと、会社の負担は30万円では終わりません。

数字で見ると、同じ額でも重さが変わる

社員10人に、去年と同じく1人30万円の冬の賞与を出す場合を考えてみます。上半期の利益が去年より下がっていると、同じ額でも負担の割合は大きく変わります。

去年 今年
上半期の利益 900万円 600万円
賞与(10人×30万円) 300万円 300万円
会社負担の社会保険料(約14.2%) 約43万円 約43万円
上半期の利益に占める割合 約38% 約57%

※数値は架空の例です。社員は全員40歳未満、協会けんぽ兵庫支部の令和8年度の料率で概算しています。

去年は利益の4割弱だった賞与が、今年は6割近くになります。下半期の資金繰りや、来期の採用・設備にまわすお金が薄くなるかもしれません。

逆に、利益が伸びた年に「去年と同じ」で据え置くと、がんばった社員に報いる機会を逃します。どちらの場合も、出発点を「去年の額」から「今期の数字」に移すことが大切です。

賞与の「総額の枠」を決める3つのステップ

一人ひとりの額を考える前に、会社として出せる総額の枠を決めます。順番はこうです。

ステップ1:今期の利益の着地を見込む

上半期の試算表をもとに、期末の利益を見込みます。単純に2倍にせず、下半期の繁忙期・閑散期や、決まっている値上げ・昇給を織り込みます。

ステップ2:「先に残すお金」を決める

借入の返済、納税の準備、来期の採用や設備のためのお金を、賞与より先に確保します。賞与は「残ったら出す」ではなく「残すお金を決めてから出す」と考えると、決め方がぶれません。

ステップ3:社会保険料込みで総額を決める

残りの範囲で、会社負担の社会保険料まで含めた総額を決めます。そのうえで、一人ひとりへの配り方(基本給の何か月分か、評価でどう差をつけるか)を考えます。

明日からできること

  • 上半期の試算表で「賞与を払う前の利益」と「いまの預金残高」を確かめる。
  • 去年の賞与総額に、会社負担の社会保険料を足した「本当の総額」を出してみる。
  • 支給額と一緒に「今年はこういう考え方で決めた」と社員に伝える一言を用意する。

賞与の考え方を毎年伝えていくと、社員にとっても「会社の数字が良くなれば自分にも返ってくる」という実感につながります。上半期の数字の見方は、上半期の試算表を読む記事も参考にしてください。

3分でできるセルフチェック

☐ ① 去年の賞与総額を、社会保険料込みで言えますか?

☐ ② 今期の利益の着地見込みを、ざっくりでも数字で言えますか?

☐ ③ 賞与より先に「残しておくお金」が、いくらか決まっていますか?

答えに詰まったところが、会社の伸びしろです。

冬の賞与は、去年の額ではなく、今期の数字と「先に残すお金」から逆算すると、社員にも自分にも説明できる額になります。当事務所では、こうした問いを決算書と試算表で社長と一緒に考える「経営戦略会議」を行っています(初回お試しは無料です)。

経営戦略会議について見る

参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和8年度 都道府県単位保険料率」/日本年金機構「厚生年金保険の保険料」/日本年金機構「賞与にかかる保険料はどのように計算するのですか。」

※本記事は2026年10月時点の公表資料に基づいています。個別の状況により取扱いが異なりますので、具体的な判断はご相談ください。

-経営

トップへ戻る