気づけば一日が終わり、来期の計画は「落ち着いたら考える」のまま。そんな社長は少なくありません。
この記事のポイント
社長の1週間を「作業・管理・経営」の3つに分けて書き出すと、時間の使い方が数字で見えます。社長の時給を目安にすると、手放す仕事と、先に確保すべき時間がはっきりします。
なぜ社長の1週間は「作業」で埋まってしまうのか
中小企業の社長は、営業も現場も経理も見ています。目の前の仕事は、期限があって、やれば終わります。
一方で「来期の値段をどうするか」「誰を育てるか」といった経営の仕事には、期限がありません。だから後回しになり、急ぎの仕事が、大事な仕事を押し出してしまうのです。
忙しさそのものが悪いわけではありません。問題は、何に何時間使っているかを、社長自身が知らないことです。
社長の時間を3つに分けてみる
社長の仕事は、大きく次の3つに分けられます。
- 作業:自分の手を動かす仕事(見積書づくり、現場の手伝い、請求書の整理など)
- 管理:人や仕事を回す仕事(進み具合の確認、トラブル対応、社内の相談など)
- 経営:会社の先を決める仕事(値段・投資・採用・人の育て方を考える、数字を見て判断する)
ある社長の1週間を、架空の例で見てみます。
| 区分 | 主な中身 | 1週間の時間 |
|---|---|---|
| 作業 | 見積・現場・事務 | 28時間 |
| 管理 | 確認・相談・対応 | 17時間 |
| 経営 | 数字を見る・考える | 5時間 |
| 合計 | 50時間 |
※数値は架空の例です。
50時間働いて、会社の先を考えている時間は1割だけです。この社長が怠けているわけではありません。真面目だからこそ、作業を引き受けてしまうのです。
「社長の時給」で仕事の値打ちを見直す
ここで、社長の時給をざっくり出してみます。たとえば役員報酬が年900万円で、週50時間・年50週働くなら、900万円÷2,500時間で時給3,600円です。
作業の28時間を、この時給で考えると1週間で約10万円分。そのうち、社員やパートさん、外部のサービスにお願いできる仕事はどれくらいあるでしょうか。
時給は厳密でなくてかまいません。「この仕事は、時給3,600円の人がやるべき仕事か」と一度問いかけるだけで、手放す候補が見えてきます。
明日からできること
- 1週間だけ、30分単位でメモする:手帳やスマホのカレンダーに、終わった仕事を書くだけで十分です。
- 3色に塗り分ける:作業・管理・経営で色を分けると、偏りがひと目で分かります。
- 「経営の時間」を先に予定に入れる:たとえば毎週水曜の朝2時間を、試算表を見て考える時間として確保します。空いたら考える、では永遠に空きません。
- 作業を1つだけ手放す:一度に全部ではなく、毎月1つ。手順を書き出して渡すところから始めます。
経営の時間が週5時間から週8時間に増えるだけでも、値段や採用の判断を「なんとなく」で決めずに済むようになります。
中小企業庁の中小企業白書(2025年版)でも、「経営戦略」や「ガバナンス体制」(経営の仕組みづくり)が章を立てて取り上げられています。その土台になるのが、社長自身の時間です。
3分でできるセルフチェック
☐ ① 先週、会社の先を考える時間は何時間ありましたか?
☐ ② 今週の予定の中で、社長でなくてもできる仕事はどれですか?
☐ ③ 来週の予定に「数字を見て考える時間」は入っていますか?
答えに詰まったところが、会社の伸びしろです。
忙しさを減らすより先に、時間の中身を知ることが第一歩です。社長の時間が変わると、会社の数字も変わり始めます。当事務所では、こうした問いを決算書と試算表で社長と一緒に考える「経営戦略会議」を行っています(初回お試しは無料です)。
参考:中小企業庁「2025年版 中小企業白書」(第2部第1章 経営戦略・ガバナンス体制)
※本記事は2026年10月時点の公表資料に基づいています。個別の状況により取扱いが異なりますので、具体的な判断はご相談ください。